2ドアクーペのファッションアイコン的な存在
「86」は、免許取りたてのビギナーから60代のベテラン、男性/女性、MTだけでなくATの比率も高いなどトヨタの想定以上に幅広いユーザーが購入している。となると、用途も多様である。86というとFRレイアウトのスポーツカーであるがゆえに走りにこだわりのあるユーザーが多いように思えるが、実際には日本車では数少ないライトな「2ドアクーペ」として愛用している人も数多いそうだ。
女性の意見を採用したスペシャルな86
86は多くのメーカーからカスタマイズアイテムがラインナップされているが、トヨタ自ら新たな86を提案するべく誕生したのが「86スタイルCb」である。詳しく説明すると、開発はトヨタなのだが、86チームではなく、純正アクセサリーやコンバージョンモデルを開発する「C&A事業部」が独自に動いたプロジェクト。じつは女性の意見を活用したスペシャルモデルなのである。企画を担当した中野めぐみさんはこう語る。
「Cbはクールビューティの略で、スタイルを表現するファッション性やセンスを重視したカスタマイズモデルとなります。86の運転の楽しさに加えて、外から見られる楽しさを付加させています」
バンパーとヘッドライトを変更して斬新なマスクが誕生した
最大の特徴はベースが86とは思えないフロントマスクである。何かに似ているようで似ていないツルっとしたデザインは、バンパーとヘッドライトの変更のみで実現している。デザインを担当した星 龍秀さんはこう語ってくれた。
「ボディカラーの検討がスタートで、ニュアンスベージュ×デミタスブラウンの2トーン(オプション)の組み合わせが生まれたのですが、そのボディカラーに合わせたマスクを作ろうと。トヨタ車はツリ目が多いので、親しみのある顔を目指しました。懐古主義ではなくLEDやヘッドライト内の造形などに新しさを盛り込みました」
75mm延長されたフロントオーバーハング
ロー&ワイドを強調するために、フロントオーバーハングは75mm延長。また、リアオーバーハングも延ばす予定だったというが、バンパー変更ができなかったため、ダックテール形状のリアスポイラー(オプション)を採用している。これにより、まるでウエストラインが延びたかのような印象となっている。
ちなみにホイールは販売店オプションのファクトリーチューン18インチBBSを履くが、まるでこのクルマ用に開発されたかのようなマッチングのよさである。
「じつはこのホイールは、以前トヨタデザイン在籍時に私がデザインした物です(笑)。このホイールにザックスダンパーを付けると、ベストな乗り味になるんですけどね……」(星さん)
メーターやステアリングなどを変更したインテリア
大きく印象を変えたエクステリアに対して、インテリアは小変更。ステアリングはレクサスも採用している高感触レザー巻き、インストパネルは黒檀木目となっている。メーターは「サイバーストーク」とのコラボレーションにより開発された。
「ノーマルのメーターは“走るぞ”というアイコンになっていますが、スタイルCbは“クールに緩く走る”というイメージで、アナログ時計のようなテイストを目指しました。間接光で見える感じで、数字は昔の懐中時計のようなフォントをセレクトしています」と中野さん。
ちなみにD型で採用された「タンカラーミックス」のインテリアコーディネートが似合うような気がするのだが、残念ながら設定はない。エクステリアは色や質感にこだわったコンセプトなのに、ちょっと残念な部分でもある。ちなみに2014年のFuji86スタイルで参考展示されていた豊田紡織製スポーツシートを活用した専用レザーシートなどがあればさらにいいのだが……などと思ってしまう。
気になるプライス(2015年発売当時の価格)はノーマル+約100万円。さらにアッパーをマットブラックでラッピングすると約30万円、専用のプレミアム2トーンペイント(2トーンなのに塗装の段差がない!)を施すと約120万円と値段的にはかなり高額になってしまうが、メーカーからの新提案、皆さんはどう感じるだろうか?
■TOYOTA 86 style Cb(価格は消費税込)
418万582円(6MT)/426万3055円(6AT)
<オプション>
●専用アッパーラッピング(30万24円) アッパー部分をマットブラックのラッピングによる2トーン仕様
●専用プレミアム2トーンペイント(120万96円) ニュアンスベージュ(ロア)×デミタスブラウン(アッパー)
●メッキガーニッシュ付きリアスポイラー(11万988円)
※この記事は2015年のXaCAR 86&BRZ magazine Vol.07の記事をもとに、再編集したものです。表記の数値や価格、肩書きにつきましては、当時のものになります。